ヨドコウ迎賓館

建築に興味がある方で、フランク・ロイド・ライトの名前を聞いたことがないという方は、おそらくほとんどいないはずです。それほど高名なこのアメリカ出身の建築家ですが、実は多くの素晴らしい建築をこの日本に残しています。 もっとも有名なものは、おそらく旧帝国ホテルということになるのでしょうが、「自然との調和」という意味では、この旧山邑家住宅、現在のヨドコウ迎賓館こそがもっとも素晴らしい建築になるはずです。 自然との調和を目指した建築家 ライトは、自然と建築物の調和をテーマの1つとして常に持ち続けた建築家で、このヨドコウ迎賓館を生み出した後も、アメリカはペンシルバニア州に落水荘という自然と融和した素晴らしい建築物を残しています。 この落水荘はライトの代表作とされ、かのアルベルト・アインシュタインやチャールズ・チャップリンも訪れたほどです。ヨドコウ迎賓館はその雛形になった可能性もある作品で、兵庫県六甲山の麓に自然と見事な調和を見せながら、現在も佇んでいます。 ロイドはヨドコウ迎賓館を建築するにあたり、六甲山の稜線を損なわないよう気を使い、また館内からも自然との一体感を感じ取れるような眺望を確保しているといわれています。 外装で使用した大谷石を室内にも顔を出させることで、外と中の融和をおこなうという発想も、ロイドならではのものであり、どれほど自然との融和を意識していたかを如実に表しています。

室生山上公園芸術の森

奈良県宇陀市の、室生寺を見下ろす高台にある緑豊かな美しい公園。それが室生山上公園芸術の森です。 彫刻家、井上武吉によって構想されたこの公園は、過疎対策として策定された「むろうアートアルカディア計画」のシンボル事業として計画が進められました。井上武吉の逝去に伴い、環境芸術の第一人者である彫刻家ダニ・カラヴァンに引き継がれた事業は、その全体が彼による芸術作品として、一般的な公園とは異なる芸術と自然が渾然一体となった全く新しいものとなったのです 見たこともない自然とアートの調和 公園に一歩足を踏み入れた方は、今まで見たことないその空間にきっと面食らうことでしょう。素晴らしい緑の景色を、全く阻害することない人工的な造形物。その調和は、まさしくアルカディア=自然豊かな理想郷といっても過言ではありません。 「天」をイメージして作られたといわるこの公園は、まさしく天上の空気を醸し出しているのです。またダニ・カラヴァンはイスラエル出身の芸術家ながら、日本文化にも深い造詣があり、日本文化の象徴的なモチーフ、鳥居を用いたデザインも使用しています。 彼が用意した全ての造形物は、完璧なまでに自然と一体化して、見る者に大きな感動を呼び起こすのです。

法隆寺

日本を代表する建築物であり、現存する世界最古の木造建築物でもある法隆寺。もちろんユネスコの世界文化遺産にも登録されています。奈良県生駒郡斑鳩町にあり、聖徳宗の総本山でもあります。聖徳太子によって建造されたといわれ、同時期に建造が始まった斑鳩宮に隣接して建立されたといわれています。 蘇我入鹿によって斑鳩宮と共に焼き払われ、その後再建されたという説と、法隆寺は焼けずに残ったという説がありますが、いずれにせよ信じられないほど古い建築物であることに変わりありません。 非対称性が意味する日本の風景との調和 中国から伝来した仏教建築ではありますが、中国と日本の建築には特徴的な違いがあります。それは「対称性」です。中国の仏教建築は、対照的に作られていることが多いのですが、日本の仏教建築は逆に左右非対称になっていることが多いのです。 何故このような違いが生じたのでしょうか?それは、日本は平地が少なく、起伏に富んだ景観を持っていることと関係しています。風景との調和を考えたとき、建築物が非対称性のほうがより馴染みやすいということなのです。 日本人は古来より自然との調和、共存ということを考えながら生きてきた民族ですが、建築物にもその思想は繁栄されているということなのです。

神勝寺 禅と庭のMUSEUM

天心山神勝寺は、1965年に建立された臨済宗建仁寺派のお寺です。広島県の福山市に居を構えるお寺で、山陽新幹線も通るJR福山駅から車で30分ほどの山あいに位置しています。座禅や写経の体験ができることで知られた神勝寺ですが、2016年にこのお寺の7万坪にも及ぶ広大な敷地に作られた「神勝寺 禅と庭のミュージアム」が大きな話題を呼ぶことになります。 美しい自然と調和した禅の空間 全体設計を創作プラットフォーム「SANDWICH」で活動する彫刻家、名和晃平が中心になっておこなったこのミュージアム。常設展示館「荘厳堂」では、白隠禅師の禅画、墨跡が楽しめますが、それだけではありません。 このミュージアムは、各種建築物を含めた広大な空間全てがミュージアムとして構成されています。福山の美しい景観に調和するように配された、それらの建築物がその最大の魅力なのです。 滋賀県の「大本山永源寺」から移築された日本古来の建築美を誇る「含空院」では、お茶を楽しむこともできます。建築家/建築史家である藤森照信が手掛けた「松堂」は、事務所として使用されていますが、緑の木々に自然に溶け込むその外観が美しい建物です。 そして名和晃平が手掛けたあまりに個性的な「洸庭」は、まさしくこのミュージアムのクライマックスです。伝統的なこけら葺きを応用した舟型の外観は、不思議な存在感を発しながらも、周りの自然に溶け込むオブジェでもあるのです。

自然と調和する日本の建築

古来より日本人は、自然と共に生きてきました。それは豊かな自然に畏怖の念を持っていたということで、そのため自然を排除するという発想自体がありませんでした。だからこそ日本の建築物は、自然との調和を意識して建てられ、西洋化された現代でも、そのように作られた建築物が多く存在しているのです。 自然と調和する建築物を紹介 このブログでは、数多あるそのような自然との調和を目指した日本の建築物から、選りすぐったものを紹介していきます。何百年も前に建てられたものから、近年作られたものまで、様々な時代のものを紹介していきます。 全てのものが一般人が見ることができるものなので、もしこのブログを読んで興味を持っていただけたのなら、ぜひ一度足を運んでみてください。そこでは大きな感動が、あなたを待っています。